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 まず、短編第118期のコンペで優勝しました。投票してくださったかたがた、ありがとうございましたm(_ _)m更新が遅いため、いろいろいいたいことがあったような気がするのですが忘れてしまいました(笑。とかく課題画家しかされたことも含めて嬉しいです。一応テーマは「『認めざるを得ないこと』から敢えて目をそらすこと」みたいなものですと書いておきます。

 さて第119期も開催中&参加中です。今回も九月を過ぎて余裕ができたら全作品の感想を書こうかなと思っております。ちなみに自分の作品はちょっと最近読んだ口語調の小説に影響されているかもしれない。

 毎度のことながら、短編さんは刺激の強いところだなぁという感じがします。他作品の中で揉まれることで、素人ながら創作意欲がくすぐられるし、何かしら精神的に得るものがある、という点がとても有意義だと思っています。ライバルがいるのは恵まれたことです。同志に心配されない程度に、今後も携わっていきたいところ-∀-

 では暑い日が続きますが、皆様体調には重々お気をつけください。本当に暑いんだぜ・・・(笑

 あ、あと8月8日で短編さん十周年だったんですね!おめでとうございます。
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2012.08.25 Sat l 短編(サイト)関連 l コメント (0) トラックバック (0) l top
 あれは逃げ水か、と視線をのばす。その先に子供が立っていた。二人だ。立ち往生をしたまま何かしている。私はゆっくりと歩いて近づいてゆく。アスファルトの照り返しが皮膚を舐め上げる。町の上空に居座っている大きな入道雲を、思えばあの子供たちくらいの歳の頃に、私はカキ氷と称して食べたがった。
 子供たちは男同士で、喧嘩をしていた。虫取り網に麦藁帽子、ではなく、二人ともツバつきのカラフルなキャップをかぶり、手は頑なにポケットに突っ込んで、何かを言い合っている。最近流行のゲームあたりだろうか、キンキンと響いてくる、この世の中心にいるかのような大声からは、何かの貸し借りで揉めているらしいことが察せられた。そのまま成り行きを聞いてみたいと思う。しかしそう簡単にはいかない。
 一人がこちらに気づき、私は睨まれる。違う、私は一人になりたかったんだ。独りなのだから、君とは関わりたいわけじゃない。額で急激に冷えた汗を拭いがてら顔を隠し、私は彼らより手前にある交差点を右に曲がる。一人旅をすれば社交的になれるらしいという噂を、私はまだ全く信じられていない。傍観を許されなかったことでむしろ子供を恨みたくなる気持ちの苦さに、私は歩み続けながら顔をしかめた。日陰が欲しかった。
 いつの間に私は子供である私を捨てたのだろうか。あの子供たちを背にしてからはそんなことばかりを考えていた。そのため大きな葉桜で日射を回避した公園のベンチを見つけた頃には、私はもうだいぶうなだれていた。力なく座ってタバコをとりだす。ベンチが砂誇りを被っているのが尻の感触で分かる。舌打ちをする元気はない。
 背後から降り注ぐ蝉時雨の中で、私はふと幼年時の幼馴染を見た。鳴いているのはクマゼミだ。私たちはよくクマゼミの首にタコ糸を括って、散歩をして遊んだのだった。幼稚園時代だったか、それとも小学校の夏休みか、放課後か、歳を取った事実は差し置いて、彼女と駆け回る思い出だけが目線の先で笑っている。
 幹のほうを振り返ると女児と目が合った。幼馴染ではなかった。どうやら桜の後ろに隠れてこちらを観察していたらしく、彼女は顔を背けて逃げていく。小さなワンピースを見送ってからベンチに置いた右手に目をやる。その横で、指で描いた兔だか熊だかが私に笑いかけていた。驚き、ほっとする反面、己自身の異物感に哀しくなる。せめて傍にいよう。私は夕立まで、そのようにしていた。

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※夏の夜を書いたあとなので、昼版。しかし主人公、だいぶくたびれている(笑)
※晴れの日のクマゼミは午後にあまり鳴かないらしい。したがって主人公は昼飯抜きで座り続けていたことになる。お疲れ様です。
2012.08.25 Sat l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top
 僕は読書家ではないため、小説を読むのには慣れていません。それで最近になって少し読書量を増やしてみたのですが、すると読めば読むほど読み方が分からなくなる。そんな読書スランプに陥っている今日この頃です。
 そんな事情もあり、自分の意見にはますます自信がもてなくなってきているのですが、一応短編(ttp://tanpen.jp/118/all.html)の感想をさらーっと書いたので興味ある方は追記にお進みください(ペコリ
 まぁあくまで一個人の主観ですのであしからず。ではでは。
2012.08.04 Sat l 短編(サイト)関連 l コメント (0) トラックバック (0) l top
 小石を蹴ったら、撥ねた先で蛙が鳴いた。その時の声が、スンとした夜闇のくせに湿っぽく響きやがって、俺は思わず隣を歩くチィ子の方を向いたんだ。狭い畦道だから、さっきから肩とか髪がちらちらぶつかってどうしようもなくて、うっかりチィ子を田んぼに突き落としちまうんじゃないかなんて事を考えながら、実際には拳を握るくらいしかできない不甲斐なさに何度か舌打ちをしていたところだった。
 風が涼しい。
「来年はどこいくの?」
 チィ子が言った。俺の方に顔が動いたかと思ったら、中途半端な向きで止まって、そのまま空を見上げて、のろのろ歩き続けている。星がそんなに好きなのか、楽しそうに目を淡く光らせて。
 また風が吹いた。チィ子の吐息が溶けていった。すると俺ははっとした。奴の姿も色も風の中に、綺麗に溶け合っていたのだった。
 そして俺は、そっと拳を解いてしまう。全部収まったようで、全部手放してしまう感覚だった。幼かった頃の俺なら、泣きだしていたかもしれない。
「遠くだな。だいぶ遠く」
 ずっと広がる稲野原。チィ子はくっくと笑いやがって、
「なんだっけ空飛ぶ豚の映画のさ、飛行機でライトパシャパシャして交信するやつ」
 思惑は不明。でもまぁ星空を見ながら考えてみる。
「モールス信号?」
 適当に言ったけど、あれはどうやら当たっていた。
「あれやってみない?ねぇ、ほらあっち行って」
 唐突にチィ子は俺を遠ざける。あいつも向こうに行ってしまって影も形も分からなくなる。蛙の鳴き声って、こんなにせわしないもんだったのか、と思う。
 フラリと向こうで小さな光が揺れた。なるほど、携帯電話の液晶画面を光らせて、チィ子が掲げているわけだ。俺に向けられた信号はぱかぱか出鱈目に光って消えて、まったく意味が分からないんだけど、俺は泣きそうになりながら慌ててポケットを探った。
 送り合う合図は届く。かといって、おかしい話だけど、通じ合うわけじゃない。でもこういうことだけは飽きないんだチィ子のやつ。それで、好き勝手に飛び跳ねてみたり、踊ってみたりして、時々ケタケタ笑ったりして遊んで、最後はずっと手を振っていた。二つの光が田んぼの端と端で同じように揺れて、夜の中に消えるんだ。そうやって閉じ込めた光だったんだ。星、蛙の声、風、田んぼの匂い、チィ子。ちぃこ。
 そのせいか、逃げていってほしくないからなのだろうか、夜に携帯電話を開くのは今でもよく躊躇うんだ。

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※通常なら書き捨てるタイプの作品ですが、このまま短編第119期に投稿しました。かなり印象的な面において素直に書いたため、人に評価してもらうのはどーかなーって思ってしまう一方、完成当初の満足感と、人に読んでもらいたい感じが結構大きかったので。
※「奴の姿も色も風の中に、綺麗に溶け合って」というのは視覚的隠喩であり、チィ子が溶けてなくなってしまったのではなく、夜風もチィ子の一部となっているような気がしたってのを表現したかったわけです。夜ならではの錯覚だと思うのです。しかし言葉足らずかな、、
2012.08.01 Wed l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

 墓場の縁には唐松が植えられている。黒い枝枝が高く、遠景の山々を隠している。何年そこに生えているのかは分からないが、何度訪れても、僕は「彼ら」をあまり好きになれない。ここは彼らの「故郷ではない」どころか、「彼らの存在しないこと」が本来あたりまえなのだ。けれど、未だ融け残る雪のためだろう、景色にはよく馴染んでいる。
 息の根を押しとどめていた季節が終わる。来る途中、路肩に露出した地面で福寿草が咲いていた。黄色い花弁の器に降り積もるなごり雪を、僕は払わなかった。冷たそうではあったが、雪の降る場所に、特別な場所などはないから、代わりに僕は、活性を奪っていくその冷たさを愛でた。僕はまだ、確かに冬を望んでいる。
 父の墓は、普通の墓石と違って横長の形をしている。両端に薔薇の彫刻があって、近代的で、初めて見た時は、少し恥ずかしかった。十年経った今はもう、父以外の何ものでもなくなってしまって、あの唐松のように、まだ好きにはなれずにいるが、やはり同時に、僕の意識には馴染んでしまっている。
 雪に埋もれているが、祖父が頑張ったのか、墓に至るまでの道は、きちんと踏み固められていた。僕は駅前で買ったカップ酒を供え、一人で「父」と向き合いしゃがんでいた。法事とか、供養とか、そういう形式に従いに来たわけではない。実家から大学の街に戻る途中、その真ん中あたりで特急を途中下車して、ふらりとここにやって来たのだ。雪が降っていたから、そんな形式とは関係なく、不意に「父」に会えるような気がした。そう「誤魔化せる」と思った、といってもいい。
 手を合わせたあと、カップ酒を手にとって一口含む。アルコールの香りが、酒の温度と一緒に意識の中に流れ込む。飲み込んで息をつくと、あの黒い枝枝が目に入った。僕はしばらくそれを眺めた後、不作法な事を思いついてにやりとする。
 立ち上がり、周囲に誰もいないことを確かめ、僕は瓶を傾けた。艶やかな液体が墓石を濡らす。雪を融かし、彫刻の上を撫でていく。そうして僕は初めて、父と酒を一緒に飲んでいた。酔狂だ。しかし不作法は、むしろ僕と父の「秘密」を僕の中で正当化していた。
 まんべんなく「父」に酒を飲ませてから、僕は残りを一気に飲み干す。それから墓石の前で胡坐をかき、目を瞑る。雪は僕らを覆っていく。

 遠景の山々でクマゲラが春を呼ぶ。長い時間が在ったようだ。僕は目を開け、冷たくなった尻を上げる。


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※短編第118期投稿作品
※鉤括弧つかいすぎた。
2012.08.01 Wed l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top