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古びた西洋風のランプから出てきた彼は、それはもうどこのNEETかと思われるほど荒みきった風貌を呈し、私は無意識のうちに口で呼吸をしながら彼を見ていた。

「やあやあ我こそはランプの精。汝我に何を望むか」

「消えてくれ」

迷わず私はそう言った。

「なるほどそうか、汝己が財産を消してくれと言うか。あい分かった!」

私が口を挟む前に、彼は私の財産を消した。

「さあ残る願いはあと二つ。汝我に何を望むか」

「死んでくれ」

無の平原に裸体を晒す私は迷わずそう言った。

「汝己れを好く者全て死ねと申すか。豪快なやつよ、そおい!」

私が口を挟む前に、彼は40秒後に父や母や数少ない友人が全て死ぬ呪いをかけた。

私は怒りで狂いそうになった。何が豪快だ。お前が豪快に私の身ぐるみを剥いだのではないか。あげく皆殺しやがった。そもそも望みと全然違う。本当にランプの精ならなぁ、ランプの精ならなぁ……!

「ついに願いはあと一つ。我はそれしか叶えられぬぞ。さぁ汝何を望むか」

「私を魔法使いにしろ」

「は?」

彼は初めて言葉に詰まる。さぁ私の主張を聞きやがれ。

「お前がどれだけ偉いか知らんが、人の人生を奪ってどうする。財産を奪ってどうする。パンツを奪ってどうする。ホモか?いや、魔法使いならなぁ、もっと正しく人の要求を聞いたらどうだ。引きこもりすぎて耳垢が詰まっているのではないか?一度耳鼻科へ行くことをお勧めする」

「ありがとう」

彼は鼻をほじりながら言う。

「というか、私を魔法使いにしろ」

私はわなわなと震えながら泣いていた。彼はスレた笑みを浮かべる。

「あんたさぁ、夢見てんじゃねぇよ。こんなことでウジウジしてよぉ、不条理体験足りねぇんだよ。もういっそ俺の代わりにランプ入っとけよ。あったかくて飯も食えるから引きこもってりゃ最高だぞ?ぬくぬくやってりゃ拾われるまでに魔法使いになれるだろうよ」

そうして私はランプに入った。中はあったかくて飯も食えた。ぬくぬくしていたら外に出られないことに気づいた。私は焦燥に駆られた。でも出られなかった。

居心地がよすぎた。

私はガバリと起き上がる。冷たい汗が脇をつたって臭い。

ああそうか、魔人を廃人と読んだのだ。枕の下のエロ本を引っ張り出して私は乾いた笑いを漏らす。次にカレンダーを見て思わず涙ぐむ。

目の前の扉の外に出なくなってどれほど経つのか私にはもう思い出せない。

デリバリーピザを食べ始めて早幾星霜。

私は晴れて三十路を迎えた。


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※おめでとう!
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2011.11.25 Fri l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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