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喧嘩をした。原因は、一方的に姉ちゃんにあるはずだった。

その時、僕は外で委員会の仕事をしている最中だった。
姉ちゃんは友達と一緒にやって来て、うっかり僕と出くわした。
そして、こう言ったのだ。
「あ、キモイなあ。弟に遭っちゃった。あいつあいつ。キモいでしょう?
性格も悪いよ。いつも私に悪口言ってさ。私、大嫌いなのよね。臭いし」
信じられるだろうか?
僕の目の前で、大勢の友達に姉ちゃんはそんな事を言ったのだ。
僕は静かに泣きながら仕事を続けた。
続けながら、絶対に許してやるものか、と思った。

家に帰ってから、僕は大いに不貞腐れた。
何を言われてもストライキのごとく、寝転がって微動だにしなかった。
そんな僕を見て、母さんは困っていたけど、
事情を知ると鬼のような形相で姉ちゃんを叱り、謝りなさいと言った。
それまで姉ちゃんは涼しい顔をしていたが、ようやく渋々僕を見て、
「さっきはゴメン」と言った。でも許さない。
「心がこもってない」
僕は頑なに動かなかった。
それから姉ちゃんは何度も謝り、その度に僕は却下した。
ざまぁみろ。
そして僕はなおも不貞腐れ続ける。

しかししばらくすると、母さんは、今度は僕に矛先を向けるのだった。
「あんたもいつまでウジウジしてんの!いい加減にしなさい!」
その言葉に、僕は耳を疑った。どうして僕が怒られる?
収拾がつかないのは、ひとえに姉ちゃんのせいなのに。
そう僕が抗議すると、姉ちゃんは呆れ、母さんはさらに怒った。
だから僕は家を飛び出した。畜生とまた泣きながら。

やり場のない怒りに任せて近所を走りまわり、
家の前まで戻って来ると、突然僕には殺意が目覚めた。
この家に、火を点けてやりたい。そう思った。
僕を苦しめる不条理を、まとめて全部燃やしてしまいたかった。
そうやって不条理の炎に悲鳴を上げながら、皆死んじゃえばいいんだ。
饐えた感情をそのように持て余しながら、時間だけが過ぎていった。
そして夜が来て、僕はとても寂しくなった。

「あんた、どこ行ってたの?寒かったでしょ」
まるで怒っていなかったかのように、そう微笑みかける母さんが憎い。
「さっきのテレビ、面白かったのに」と、
喧嘩などなかったかのように、僕に振る舞う姉ちゃんが憎い。
でもいちばん憎いのは、あれだけ酷い事を考えていながら、
結局こうしてノコノコと帰って来た、僕自身だった。
温かいシチューを口に放りこむと、僕の目からは再び涙が溢れだす。
美味しくて、悔しかった。


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※悔しかったのは許すつもりなんてなかったのに
弱い心は寂しさの前に屈服し、それを見せつけられるように
シチューをとても美味しく感じてしまったからです。
という国語の入試問題みたいな話。
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2011.12.02 Fri l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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