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夕方の大通り公園をさまよっていると、「いた!」という声がして、
彼女は人ごみを掻きわけながら僕の前までやってきた。
「お久しぶり」
僕と彼女は高校以来の付き合いで、会うのは数年ぶりとなる。
ウチの留学生が、遊びに行きたいんだって。
東京で暮らす彼女は、ある日僕にそう言ったのだった。
だからその日は、彼女の他に二名ほどの外国人もいた。
僕はさっそく予定に沿って、彼女たちを案内し始める。
本当はもっと彼女との再会を楽しみたかったが、任務は任務だ。
それにもう、彼女は見ての通り、僕の世界に住んではいないのだ。
自分にそう言い聞かせながら僕は歩いていく。
それでも、彼女が僕を探し当てた瞬間に見せた
泣き出しそうな瞳は、どうしても頭から離れない。

高校時代、僕と彼女はとても仲が良かったのだが、
付き合っていた、というわけではなかった。
しかし、僕は確かに彼女のことを好いていて、
彼女も僕の気持に気づき、優しくしてくれた。
ただ、彼女には僕と付き合えない事情があるようだった。
それを直接僕に話してくれたことはないが、
僕はそれでも、彼女のそばにいられて幸せだった。

「私、二十四歳で死ぬと思うの」
ジンギスカンを食べながら、彼女はそんな事を言っていた。
対する僕の返答は、「そうなんだ。それまでに何するの?」。
もともと破天荒な女の子だったから、聞き慣れてもいたし
それが戯言じゃなかったとしても、そういう話の流れだったのだ。
彼女は夢を語る。
起業したい。放課後に通う学校をつくりたい。等等。
どこまで叶うかは分からない、とも彼女は言っていた。
しかし、僕にはむしろ、全部叶うんじゃないかと思えた。
彼女にはそのくらい、行動力もあったから。
こいつには敵わないと、何度思い知らされたか知れない。
だから僕は、「陰から見守っているよ」と微笑んだ。

夜のホテルではドンチャン騒ぎだった。
翌朝には、僕も外国人も、二日酔いでグダグダだった。
一方彼女は一番飲んでいたのにシャキリとしていて、
ケツを叩く勢いで僕らを外に追い出した。
ああそうだ。ちっちゃいのに、図太い奴だったなぁ。
彼女の不敵な笑みに、やはり僕は敵わない。

「死ぬ前に連絡するから」
ホームのベンチに座り、僕の隣で彼女は言った。
列車が来て、彼女は乗り込む。
僕の任務は終わってしまう。
「“生きてるよ”っていう連絡をくれよ。
それと、誕生日おめでとう」
僕が小さなストラップを彼女に渡すと、
列車の扉は、音を立てて閉まった。


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※8割ノンフィクション
故に物語と呼ぶにはあまりに断片的か。
コードネーム「エンドウ」に捧ぐ。
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2011.12.02 Fri l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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