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緑と僕を繋ぐ話は多い。

小さい頃によく遊んでいた粘土は、緑色をしていた。
粘土を使った悪戯が、僕は大好きだった。
ある日鼻の穴の下に細長い粘土をくっつけて
「青っぱな出たぁ」などと言って母を驚かそうとすると、
母は丁度不倫中で僕は驚き、思わず粘土を鼻から呑んだ。
その後、粘土は出てきていない。
おそらく、僕の体の一部になったのだろう。
それでも良いと思えるくらい、僕は粘土、もとい緑が好きだった。

時は進んで、中学生になり、僕は野球を始めた。
ポジションはライト。学校のグラウンドでは、
そのポジションが、もっとも芝生の緑に近かった。
だからシートノックで大きく逸れた球を捕り損ねた時などは、
芝生の上に倒れ込み、よく青臭い匂いを嗅いでいた。
野球がずっと下手だった分、僕は草の匂いをよく覚えている。
思えば、あのあたりでよく用もたした。
おなかを壊した時なんかはとても助かったものだ。
緑はいつも僕を受け止め、支えてくれた。

高校生になると、ちょっと緑とは離れるのだが、
こんなエピソードがある。
僕にはちょっと悪い友達がいて、僕の家に遊びに来た時に、
大量の十円玉をどこかに隠した、と言ってきた。
だがその友達は、盗んだわけではないという。
それを見つけたのは、久しぶりに髪を整えようと思った朝だった。
ヘアワックスのふたを開けると、中身がおかしかったのだ。
灰色のはずが、鮮やかな緑。
ほじくると大量の十円玉が出てきて、僕はその緑が
「緑青」という、酸化した銅の化合物であることを知った。
その美しさに見とれ、うっかり舐めると眩暈がした。
そう、緑は美しい。眩暈がするほどに。

大学ではいよいよ、僕は緑との距離が近くなった。
たぶん、鼻息とか、わかっちゃうんじゃないだろうか。
僕は農学部に進み、森林系の学問に従事し始めたのだった。
いわゆる、「緑を守る」ために。
もう、緑と結婚するくらいの勢いだ。

そんなことを思っていたら僕は社会人になった。
そして出逢ってしまったのだ。
そう、「みどり」さんと。
これはもう、運命であることは疑いようがなかった。
ひとめぼれとか、そんな生易しいものではない。
出逢った瞬間に、僕はもう決めていたのだ。
これからは、「みどりさんと守ろう」と。

そんなわけで、

これから僕らは新たな旅路を二人で歩んでいきます。
皆さん、こんな僕らを、これからも宜しくお願い致します。


――披露宴会場。
親父たちが顔を緑色にして怒鳴りに来る五秒前のスピーチであった。
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2011.12.02 Fri l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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