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 死後の国は地下にある。そこはあべこべの世界。この世の地面のずっと下にあの世の空があり、あの世の地面のずっと下にこの空がある。
 この世にとってのあの世はあの世。だけど、あの世にとってのあの世はこの世。
 この世にもあの世にも、私たちの目には見えない鬼たちがいる。彼らは宇宙よりも大きくて、水素分子よりも小さい。仕事があるから、存在している。
 鬼たちは羽子板で魂を打ち合っている。この世の鬼とあの世の鬼が、ゲラゲラ笑いながら真剣勝負。この世の鬼があの世に魂を打ち返した時が、その魂の持主が死んだ時。あの世の鬼がこの世に魂を打ち返した時が、その魂の持主があの世で死んだ時。そしてこの世で生まれなおす。魂たちはそうやって、あの世とこの世を行ったり来たりしている。
 たまに鬼たちはミスをする。空振りをすれば、飛んでいった魂の持主は死ぬことができず、仙人になる。打ち返す力が弱ければ魂は跳ね返って来て、その持主はゾンビになる。けれど最近は、鬼たちは羽子板からテニス用のラケットを使うように変わっていったから、仙人もゾンビも随分と少なくなった。
 また最近は、ラケットの性能の良さが評判を呼んで、鬼たちの競技人口も随分と増えてきた。だから魂も増産される。いまだに記録更新中。どんどん増えて、てんやわんや。
 でもそのうち飽きる奴が出てくる。すると魂はあの世にもこの世にも行けず、そのうちに弾力を失って地面に転がる。そしてようやく解脱するだろう。
 魂の打ち合いに飽きた鬼たちは旅行をする。ハワイに行ったり、グアムに行ったり、時々この世の鬼があの世に行って、あの世の鬼がこの世に来たりもする。でもひとつ、鬼たちは気をつけなければいけない。この世の鬼はあの世に行けば姿が見えるようになってしまうし、あの世の鬼もこの世の鬼は姿が見えるようになってしまう。だから隠れなきゃいけない。それでもたまに間抜けな鬼が見つかる。それが妖怪と呼ばれるようになる。
 鬼の出身地は宇宙の果てにあり、水素分子の中にある。地球で遊び疲れたら、この世の鬼はこの世の果てに、あの世の鬼はあの世の果てに帰っていく。そうやって、もう何億年もやってきた。だから今さら恐れることは、何もない。
 生物が生まれて死んで行くのは、ひとえに彼らのおかげなのだ。でも今鬼の故郷では、ずっと飢饉が続いている。僕はそれが悲しくてならない。いつかチャリティーを立ちあげて、運動を起こそうと思うよ。


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※意味不明三部作・下
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2011.12.18 Sun l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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