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 背中がむず痒い?霜焼けかな。翼を大切にね。

 二階に届くほどの高さまで育った空き地の雪山のてっぺんで、君は一人ふんぞり返っていた。たぶん、独り占めできて嬉しかったんだろう。それで偉そうにドスンと座ったら、ズボッと尻の下が陥没して、身動きが取れなくなったんだね?くの字に曲げて半分埋まった仰向けの体は、自力じゃなかなか動かせなくて、そのまま三十分。君は半ベソで虚空を見上げながら、自分を陥れた除雪機に呪いをかけ続けていた。そこに現れたのが僕、というわけだ。

 エゾライチョウって知ってる?あの鳥はね、夜寝るときは雪の中へダイブするんだって。マヌケだと思う?いやいや、別に君を馬鹿にしているわけじゃないんだ。雪の中って、意外と温かいんだよ。そんなことない?冷たくて死にそう?そうだね。でもそれは、君が普段もっと温かな場所に守られていたから、そう思えてしまうだけじゃないかな。背中を引っ掻かなければ、翼も大丈夫だから、もう少しだけ我慢してみて。

 彼が雪の中で感じるのは、あるいは今まで君が感じていた孤独に近いものかもしれない。誰にも気づかれない、世界を支配する白い静寂の圧迫。でもね、彼にとってはそこが一番安全なんだ。ほら、目を瞑ってごらん。雪の体温と、雪の鼓動が伝わって来るから。それは雪じゃなくて自分のじゃないかって?その通りさ。でも結局は、同じようなものだと僕は思う。

 そして朝が来れば、彼は羽ばたいて、勢いよく雪の中から飛び出すんだ。

 だけど、考えてみたらおかしいよね。彼にとって一番安全な場所は雪の中なのに、どうして飛ぶ必要があるんだろう。翼があるから当たり前だって?逆だよそれは。翼があれば飛ばなきゃいけないってわけじゃない。それでも敢えて大空を目指すんだ。必死になって、雪を巻き上げて、自由を求めて。ねぇ、それって君と似ている。

 ようし、見たところ君は軽そうだから、僕が持ち上げる分には問題ないけど、どうせだからもっと身軽になろうよ。何もいらないさ。涙も思考回路も雪山の下に放り投げて、後から拾いに行けばいい。その間に、風を掴んで飛翔する気分を体験させてあげるから。ただ一つ、その感覚だけは忘れないで。本当の夜明けが来る日には、ちょっと勇気がいるものなんだ。羽ばたけない人もいるくらい。でも、こわくなんかはないよ。飛べるんだ、君にも。

 うん、涙と鼻水で輝いてるぞ、良い笑顔。それじゃあいこうか。


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短編(http://tanpen.jp/)第112回コンペ投稿作品です。
影が薄いため貼るのを忘れておりました笑。
ちょっと説教くさくて小説っぽくなくなってますね。
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2012.03.09 Fri l 1000文字小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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