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 いまさらですが、夏目漱石のいわゆる前期及び後期三部作「三四郎」「それから」「門」「彼岸過迄」「行人」「こころ」をとうとう全部読みました。「行人」「こころ」は以前既に読んでいたのですが、他の四作品については長らくツンドク的な状態にあり、最近になってふと手に取った「彼岸過迄」の通読再開を皮切りに一気読み(ただし遅い)した次第です。氏の他の作品はあまり読んでいないため全体としては分からないのですが、この六作はどれも論理が丁寧に示されていて大変読み進めやすかったです。いずれも登場人物が自分の利己に苦しめられる様が鋭く描かれており、ある見方ではもどかしく、ある見方では滑稽で、又ある見方では自分の問題として唸ってしまうような大変興味深い小説でした。
 個人的に最も思い入れがあるのは、やはり中学時代に国語の授業で知った「こころ」ですが、これについて僕の中で「両親と私」の章に関する印象が抜け落ちてしまっているのでまた精読する必要がありそうです。しかし先生やKの葛藤はものすごく胸に響いた記憶があります。幸不幸が単純に分かつ事のできない概念であること、利己主義が単純に批判されるべきものでないこと(読んだ当時の僕はかなり偏った利他的思考だったので)、悪意に生きずとも罪悪にかられる人生を送りうること、などを子供心ながらに感じ取っていました。
 一気読みした四作の中で一番印象的だったのは「それから」ですねえ。高等遊民(偉そうなニート)の代助が自分と三千代の自然(言い換えれば利己)を手にするために社会を敵に回すお話。高尚な生活、生活観を自ら捨ててしまう主人公の変化がカタルシスでした。そうして「世の中が動く」とうわ言を吐く最後のシーンの表現は言うまでもなく秀逸です。それ以外にも、告白の後で百合を庭にばら撒く場面とか、代助が平岡に全て打ち明け、二人がそれぞれの苦しみに襲われている場面とか、特に後半部は強く胸に訴えかけてくる行動、状況が多く見られましたね。全体をみると人間関係の構図や成り行きそのものは単純なのですが、鷹揚な人格に隠された過敏さを以って世間に臨んだ結果の一例として、この構造もまた面白かったです。
 残りの作品についてもいろいろ面白い点があったのですが割愛。物語として最も好みなのは「門」ですね。救いようがなくても夫婦愛が健全なのが良い。表現で印象的だったのは彼岸過迄の「一筆がきの朝貌」(これどこかの文章でも見かけた気がするのですが、デジャヴか)等。まぁ要するに慎ましやかな女性に好印象を抱いたってことになるのでしょうか(笑)。
 氏の作品に関する考察などを検索すると色々な見方が存在するようで、高度な読み方をする人々がうらやましいのですが、ともかく僕は僕なりに楽しみましたよというお話でした。
 読書計画を立てるなら、ここいらで前から気になっている芹沢光治良を読んでみたい。氏の「死と愛の書」を去年読んだのですが、その内容がいまだに濃い色で残っているので、来年の頭あたりにかけてちょいちょいと手を伸ばしたいところです。
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2012.12.13 Thu l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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